冷たい風に乗って空をとぶ。
     肌を触る風はこんなにも冷たいのに、
     あの太陽は眩しく輝き、こんな自分さえをも照らしている。







気障な奴は嫌いだ。むかつきを抑えられない。吐き気のする甘い言葉を並べたてて女を口説いてる奴を見ると、爆殺したくなってくる。そんな自分がこんな事を思うなんて、とMr.5は軽く目眩を覚えた。
一生、口外することはないだろう。

自分のパートナーが天使に見えたなんて。

何しろ任務中にそんな下らない事を思ってしまった自分自身にむかついている位だから、それが他人、特に自分のパートナーに知れたとなると、できはしないけれども自爆したくなるだろう。一人でぐるぐると下らない考えを巡らしている自分に気付き、心底アホかおれはとMr.5は頭を振った。
「キャハハハハハ、弱いわね」
自分が下らない事を考えている間に、パートナーは最後のエモノに止めを刺そうとしている所だった。
恐怖の余り、悲鳴をあげることもできない男を尻目に掛け、自分の体重を限界まで軽くしたパートナー、ミス・バレンタインは地を蹴った。
冷たい風がミス・バレンタインを空まで運ぶ。
それを照らす眩しい太陽。
そう、太陽の所為だ。
ミス・バレンタインの透き通った金色の髪が、太陽の光を受けきらきらと輝いている。太陽の光は髪だけでなく、彼女の体をも包み、ミス・バレンタインがまるで天使であるかの様に見せていた。輝きに包まれながら空を舞うミス・バレンタインに、天使の幻を見てもそれは或いは当然であるかもしれない。事実、太陽の光を浴びて空を舞っている彼女を形容するならば、天使という他にない。
「キャハハハハハ、地面の下にうずめてあげる!」
しかし声をあげることはおろか、動くことさえできなくなった男を、ためらうことなくあっさりと、あまつさえ笑いながら押し潰しその命を奪う彼女は、殺し屋でこそあれ天使では決してない。
またもやそんな事を考えてしまった自分にむかついているMr.5を余所に、ミス・バレンタインはぱたぱたと乱れた服を整えている。満足のいく装いになったらしく、彼女はMr.5に笑いかけてきた。
「帰りましょう、Mr.5」

道を歩くミス・バレンタインは、やはり金色の光に包まれている。まるで太陽が、彼女だけを祝福しているかの様に。
彼女は天使ではない。どれだけ美しかろうと、天使ではない。けれどそう見えてしまったなら仕様がない、天使は天使だとMr.5は開き直っていた。
「ねぇMr.5」
不意に天使が喋りかけてきた。
「何だ」
「太陽って平等なのね」
思いもよらなかった彼女の言葉に、Mr.5は返す言葉が見つからなかった。それに構わずミス・バレンタインは続けた。
「ヒトをいっぱい殺してる私にも、綺麗な光をくれるもの。
太陽って平等だわ」
ミス・バレンタインはそっと、自分の肩を抱いた。まるで自分を包んでいるその光を、愛しむかの様に。
Mr.5には、そうしている彼女自身も太陽に愛され、抱きしめられている様に見えた。
だからだろうか。
風はこんなにも冷たいのに、天使が側にいるとあたたかいのだ。 
 








*「BWカップリング同盟」サマに寄贈致しました
02/12/28 えり
 
                          
                                       


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