「ヒューイットちゃん、何してるんでちゅかーァ?」 ソファがあったり本棚があったりしてみんながくつろいでいる部屋…あれはなんというのであろうか。まあとりあえず『談話室』と仮に名付けておこう。 談話室でヒューイットが料理の本を探していると、朝から晩まで無駄にテンションの高いリヴァーズがやってきた。 明かにテメー何かたくらんでんだろという笑みを顔に浮かべている。 リヴァーズは何かにつけてヒューイットをからかう。 ベラミー以外の男の船員はもれなくリヴァーズのからかいターゲットになっているのだが、なかでも何故だかヒューイットがことさらからかわれる回数が多い。 「…別に何をしているというわけでもないが…」 「あれ?何か本探してるんじゃねェの?」 他の者ならばここで、判ってるんだったら何してるのかと聞いてくるなと言うところであるが、そこはオトナなヒューイット。特に気にもしていない様子で視線を本棚の方に戻した。 「ああ…新しい料理にチャレンジしてみようと思ったんだが…本が見つからなくてな」 「そうかそうか。まァそれは置いといてよ、遊ぼうぜヒューイットちゃん」 返事など聞こうともせず、リヴァーズはヒューイットの首に腕を回しずるずると部屋の外へと引き摺って行った。 ヒューイットは何かを言おうとしているがリヴァーズの腕が彼の口にまで及んでいる為言葉にならない。というかなっていても当然聞いてもらえない。 なかば諦めた様子でヒューイットはおとなしくリヴァーズに引き摺られていた。 「おっとロスちゃーん!オッス!」 「……何してるんだ?」 廊下の途中で談話室(仮)へと向かおうとしていたらしいロスと出くわした。そして当然の質問を投げかけられる。 「あぁ?いや何って遊ぼうと思ってよ」 「…遊んでるのか?」 荷物のような扱いを受けていたヒューイットが、うなだれたまま弱々しく首を振った。 「……ヒューイットはいやがってるみたいだけど」 「ンなことねェって!なあ、ヒューイット!これから楽しく遊ぶんだよな!」 もう抵抗を諦めたのか、ヒューイットは溜め息をついて、「……ああ」と小さく答えた。 「ホラな?ヒューイットはいやがってねェって」 「…お前ヒューイットのどこを見てそんなこと言えるんだ。誰がどう見たっていやがって…」 「…チクショウ、判ったよ……お前も一緒に遊ぼう」 「ひとりで遊んでろ」 ロスが冷たく即答した。 「ヒューイット、リヴァーズはほうっておいて行こう」 リヴァーズにがっちり抑えられていたヒューイットの手をつかみ、ロスは背を向けた。 「あ、テメ何すんだ!ヒューイットはおれと遊ぶんだよ!」 騒ぐリヴァーズをロスは完全無視だ。ヒューイットを引っ張って談話室(仮)へ行こうと…するがガクンと体に強い反動を感じ、危うくこけそうになった。 「……リヴァーズ」 「ヒューイットと遊ぶのはおれだっつの!お前は別の遊び相手探してこいよ」 ロスに手をひかれるヒューイットの体を思いっきり引っ張り返したリヴァーズは、そのまま再びヒューイットをズルズルと引き摺って行こうとした。 「おれは別にヒューイットと遊びたいわけじゃ……ヒューイットを離してやれよ」 負けじとロスもヒューイットの腕を引っ張った。 「いーやーだーね!お前が離せよ」 「断る」 言い合いながら二人はぐいぐいとヒューイットを引っ張り合っていた。ハタから見ればステキにおかしな光景だ。 「…………痛いんだが……」少し顔をしかめ困ったような顔をして呟くヒューイット。しかしそこはオトナなヒューイット。少し抵抗して欲しい気もするが、二人の間でおとなしく引っ張られていた。 ヒューイットの言う事などさっぱり気にしていないリヴァーズと違い、その一言を聞いてロスはヒューイットの腕から手を離した。 「お、やっりィおれの勝ち!」 「…いつから勝負になってたんだ。いやそんなことよりヒューイットの意見を聞くべきだった。ヒューイットはどうしたいんだ?」 相変わらずリヴァーズに腕をつかまれたままのヒューイットは、少し考えた。 もうどうなってもいいような気になってきていたが、たしか自分は何かしようとしていたはずだ。そうだ料理の本を探して…… そこまで考えてヒューイットは思考をストップさせた。どうせ何を言ってもリヴァーズは耳を貸さないに決まっている。ならばこれ以上いたずらに時間を消費させるのはロスに申し訳無い。 「…リヴァーズの好きにしろ。ロスもヒマなら一緒にどうだ?」 「オッケ、決まり!!」 「!?…待て、リヴァーズ!」 そう聞くが早いがリヴァーズはロスの首にも腕を回し、デッキのほうへとふたりを引き摺っていった。ヒューイットは心の中で、すまないロス、と、謝ったのであった。 「…だからサッキから言ってンだろ?忘れてたモンは忘れてたんだからしょうがないだろうが」 「あたしはその神経が信じらんないって言ってんのよ!あんだけ約束してたことをフツー忘れる!?」 デッキでは最早ケンカが当たり前になってきたような気もするサーキースとリリーが仲良く怒鳴りあいをしている。 最初はサーキースの部屋でケンカを始めていたのだが、隣の部屋で航海日誌を書いているエディから「…うるさい」と静かな怒りが込められたお言葉を頂いた為、わざわざ外へ出てきてケンカの続きを始めたのだ。 エディは怒らせると怖い。そんなわけで二人はおとなしく場所をかえたのだった。というかエディもケンカを止めるなり何なりして欲しいものだが、彼にとって重要なのは周囲の環境が静かであるか否かで、騒音が無くなるのであれば 別に二人がケンカをしていようがどうしていようが全く興味が無いらしい。というかサキリリもわざわざ場所をかえてまでケンカしないで欲しい、などとツッコミはじめればキリが無いのでもうそういう事は気にしないでおく。 「んなこと言われてもな、どんだけ約束してても忘れちまうんだよおれは」 「あんたバッカじゃない!?忘れないでよバカバカバーカ!」 「うっせェなおれァバカじゃねェよ」 「花火すっぞそこのバカ!」 「あァ…!!?」 カワイイリリーにバカといわれるならまだ我慢できるというものだが、可愛くもクソもないリヴァーズの声が飛んできてサーキースは反射的に思いっきりドスのきいた声で返事をした。 そして声のしたほうを見てみればリヴァーズがロスとヒューイットを小脇に抱えて立っている姿があった。 その光景を見てサーキースは一気に熱が冷めた。 「…リヴァーズ…ていうかロスとヒューイット…お前ら何してんだよ」 「聞くなサーキース…」 「リヴァーズいい加減離せ…!大体おれは遊ぶともなんとも…」 「何って、だからよ、花火するつったろうがよ。――リリー!お前倉庫?だっけか?どこおいてたっけ、まあいいや、とにかく花火持ってきてくれよ!たしか前にどっかの島で買ったのがあっただろ」 相変わらずリヴァーズは己の道を突っ走っている。リリーは心底イヤそうな顔をした。 「やァだー。なんであたしが行かなきゃなんないのよ。ていうかなんで花火なワケ?」 「オォもう夕日も沈むな!グッド!花火するにはちょうどいいぜ!」 「…リリー…リヴァーズは人の話を聞かないやつだ…知ってるだろ」 「あぁ?なんか言ったかよロス?」 「そのくせそういうことはちゃんと聞いてんだよな…」 「サーキースお前もグダグダぬかしてねぇで花火探してこい!」 「てめェで探してきやがれ…っつーか誰が花火するっつったんだよバカ、行こうぜリリー」 リヴァーズの所為ですっかりケンカの熱も冷めたサーキースは、リリーを促して船室へ引っ込もうとした。 しかしいい感じに暴走してきたリヴァーズがおとなしくそうさせてくれるはずもない。 「まぁ待てよお二人サン、折角の機会だしここらで一発花火ブチかまそうぜ?」 「ひとりでブチかましてろ」 サキほどロスにも同じ様な事を言われたような気がするが、ひとりで遊ぶなどそんな恐ろしく虚しい事をしたいはずが無い。 いやもしかしたら暴走したリヴァーズならやりそうな気もするが、とにかくリヴァーズは尚も食い下がってきた。 「待て待て待て待て副船長!リリーも!待て!お前らリヴァーズくんがこんなに頼んでンのに冷てェヤツだな、えェオイ?」 「お前の頼みだ?…ハッ、そりゃ聞きたくねェな…あいにくおれらはヒマじゃねェんだよ」 サーキースに冷たくあしらわれ、リヴァーズは舌打ちした。 「なんだなんだノリが悪ィなどいつもこいつもよぉ…」 「言っておくが…今お前だけ恥ずかしいぐらいテンション高いぞ、リヴァーズ」 横からヒューイットの冷静なツッコミがはいった。 「アハハハ、ヒューイットナーイス!」 その一言にリリーがケラケラと笑い、リヴァーズはピクッと肩を震わせた。 「…わかったよ!!おれが探してくりゃいいんだろがよ!!?てめェらソコで待ってろ!!どっか行ったら銃で撃つからな!!判ったな!!」 ・・・逆ギレである。 おまけに主旨がズれている。誰もリヴァーズに花火を探しに行けなどと一言たりとも言っていない。 「…何?待っとかなきゃダメなの?」 「…待ってなかったらあいつ本気でキレそうだな」 ロスが溜め息をついた。 「別に待っててなくてもいいんじゃねェのか?アイツが撃ってきたらおれがビッグナイフで…」 「待てサーキース…こんなくだらない事で仲間割れをしてどうするんだ…」 「…ヒューイットの言う通りだ。待っててやろうサーキース」 「え〜あたしもう部屋戻りたいなァ〜…」 「同感だ…ロスもヒューイットも優しすぎだぜ」 軽く肩をすくませサーキースは空を仰いだ。もう夕日も姿を消して一番星がキラキラ輝いている。 …夜になったらアイツますますハイテンションになるんだよな…。そう考えるとサーキースは軽く目眩がしてきた。 「ねえねえ、エディっち、航海日誌もう書きおわったの?」 静かな環境で無事に日誌を書きおえ、コーヒーでも飲んで一息つこうとキッチンにやってきたエディに、テーブルに座っていた船員が声をかけた。 ここで説明をしておくがこの船員は、ベラミー海賊団初登場の時に、うしろのほうで酒を飲んでいたサングラスかけたドレッドヘアーの彼である。 そもそもあれが本当にドレッドなのかどうかは知らないが、私達(誰)(えりとなじのことです)の間では『ドレッド』という通称が定着しているため、彼のことは以下ドレッドと記させていただく。 「あァまあな。一応終わったが」 「じゃあさ、ヒューイっち一緒に探してくんない?おれっち酒飲みたいんだけど、どこにおいてあるかわかんないんだよね」 「…?ヒューイットいないのか?」 「そうなんだよねー。ヒューイっちってさ、この時間帯ならいっつもココにいるっしょ?部屋にもいないみたいだし」 ドレッド(仮)はぽりぽりと頬をかいた。 「そうだな…どうしたんだろうな。そろそろ夕食なのに…まあ探しに行くか」 「イェーイご協力感謝エディっちー☆」 「あら…ヒューイットいないの?そろそろご飯の時間かと思ったんだけど」 そう言ってキッチンに入ってきたのはミュレさんである。 「あーミュレっちー!そうなんだよ、だからさ、おれっちとエディっちで探そうと思ってさ。よかったらミュレっちも一緒に探してくんない?」 「ええいいわよ、……ねぇところでリリーちゃんの姿も見当たらないんだけど?」 「あァ…リリーならサーキースと」 「またケンカ…!?全くサーキースったらリリーちゃんを泣かせるなって何度言えば判るのかしら…」 エディがみなまで言う前に、ミュレさんは状況を把握したらしい。眉間にしわを寄せ、ミュレさんはつかつかとキッチンから出ていった。 「おいミュレ…」 「早く来なさい!リリーちゃんを探さないと…またサーキースに何か酷い事言われてるかもしれないわ…ああもう…」 …おれ達はヒューイットを探そうとしてたんだとか、リリーはリリーでサーキースに何か言われてもそれなりにキツイ言葉を返すから大丈夫だろとか、色々言いたいことはあったが、面倒な事がキライなエディは言わなかった。 「待ってよミュレっちー、リリっちのいる場所わかんのー?」 足早にミュレさんの後を追うドレッド(仮)の後姿を見ながら、もしかしてコイツもヒューイットのこと忘れてるんじゃないのかと思ったが、やっぱり面倒な事がキライなエディは口に出さず、マイペースな歩調で二人の後を追った。 「判らないから探すんじゃない」 「…まァそれはそうなんだが」 3人でどたどたと廊下を歩いていると、前を通りかかった部屋のドアが開き、マニさんが不思議そうな顔を覗かせた。 「どうしたの3人とも、随分騒がしいけど…ミュレ、何かあった?」 「リリーちゃんがまたサーキースに泣かされてるのよ!」 いや泣かされてるかどうかは判らないけどな… エディは心の中で呟いた。 「まあ、サーキースったら…」 マニさんは眉をひそめ、足早に歩き始めた。ミュレさんもマニさんのあとを追い、そのあとに男ふたりがしたがった。 「…あのさエディっち…おれさ、前から思ってたんだけど、この船のオンナノコって強いよね」 「……男が弱いとも言うな」 「さってっとぉ…花火ちゃんはどこかなっと…」 どたどたと足音を響かせ地下まで降りて行ったリヴァーズは、そう言いながら勢いよく倉庫の扉を開けた。 「…!!ブッ…カビくせっ!!!くっせ!!」 扉を開けた途端に強烈なカビのニオイが飛び出してきた。 咳き込みながらリヴァーズは、勢いよく開けた扉をありったけの力を込めて閉めなおした。 「ッハァァ〜…なんだよ今のニオイは…ちゃんと掃除しとけよなァァ…」 今月の倉庫の掃除当番は自分だったと言うことなど当然綺麗サッパリ忘れ去っているリヴァーズは、思いっきり脱力しながらブチブチと文句を垂れた。 「アーアー…あんなクセェとこで花火なんか探せるかよ…」 しかし花火を探してくると言ったのは自分である。誰もいない地下に虚しく独り言が響いた。 とりあえずリヴァーズは扉の前に座り込んでポケットから取り出した煙草にライターで火をつけ、この状況を打開する方法について考えを巡らした。 さて、ここで三択です。 1、息を止めてすばやく花火を探す。 2、アイツらントコへ戻っていって、花火ありませんでしたすんませんと謝る。 3、花火自体を諦める。 「……どれもイヤだなオイ…」 タバコをくゆらせ、リヴァーズは肩を落とした。 こういうことで精神的に追い詰められると、人は逃げ道を作る。 …そもそもココに花火はあるのか…!?こんなトコロに花火をおいておくか!?いや、おかねェ!!絶対おかねェ!!どっか別のところにおいてるに決まってる!そうとも、ココに花火はおいてねェ!!! 「うっし!他探すか!」 そう言って元気よく立ちあがったリヴァーズは、来た時と同様どたどたと足音を響かせ、もと来た道を引き返して行った。 「そォーだよ大体誰があんなとこに花火おいとくかってんだ!ウッカリしてたぜおれも!」 だんだん独り言が多くなってきたような気もするが、そんな事は全く気にせずリヴァーズは一階へと飛び出した。 「さて問題は花火がどこにあるかっつーことだな…どこにすっかなァ〜…」 『どこにあるか』ではなく『どこにするか』などとのたまっている所から、花火を探すという名目でとりあえず誰かの部屋を引っ掻き回して遊びたいと考えているであろう事が想像される。 少しの間考えて、リヴァーズはニッと笑った。 「…よし。ベラミーんとこだな」 リヴァーズはそう呟いて、面白そうに口笛を吹きながらベラミーの部屋へと向かっていった。 ベラミーは自分の部屋でぐっすりと眠っていた。 いつもならこの時間帯までベラミーが寝ていると、ヒューイットやミュレさんが起こしに来るのだが、今日は二人ともああいう状況にあるので誰もベラミーの部屋を訪れる事は無かった。 そんなわけでベラミーは昼頃からずっとこの部屋で睡眠を満喫していた。 すやすやと気持ち良さそうに眠っているベラミーの部屋のドアが、思いっきりバーンと開かれた。 ノックもせずに船長の部屋のドアを開け、ずかずかと部屋の中に踏み込んできたのは、もちろん、リヴァーズである。 「ベラミーいるかー!?…ん?なんだ寝てんのかよ、もう夕方だぜ…」 つまらなそうにリヴァ―ズは呟いたが(また独り言である)、ここで部屋を出て行く彼ではもちろんない。 「ベッラミー、朝だぜー起きろー!」 ベッドのシーツの端を引っつかみ、リヴァーズは力いっぱいベッドからシーツを引き剥がした。 そのシーツのうえで寝ていたベラミーは、ゴロリーンと床に転げ落ちた。 ビターンと凄い音がした。 「……ソコ、動くなよ…!!」 ただ安眠を邪魔されるだけでなく、顔から床にたたきつけられるというなんともヒドイことをされたベラミーは、地獄の底から響いてくるような不機嫌な声を発してゆっくり起きあがった。 「……………ゲ」 流石のリヴァーズも、自分がとてつもなくヤバイことをやらかしてしまったということを瞬時に察知した。 ベラミーがキレた=おれ死? 簡潔かつとっても判りやすい式がリヴァーズの脳内で展開された。ついでに今までの楽しかった思いでやら何やらが頭の中を駆け巡っている。 ワーオこれが走馬灯ってヤツ?つかおれ死ぬのか?冗談じゃねェって!さあどうするおれ!考えろ! さて、ここで再び3択です。 1、今すぐベラミーにワビをいれる。 2、おとなしく殺られるか、せめて必死に抵抗してみる。 3、逃げる。 リヴァーズが己の間違いに気付きここまで考えを巡らすまで、この間約0・2秒。そして答えを決定するのに約0.01秒。 「じゃ、おれはこれで」 答え:3。逃げる。 リヴァーズはベラミーに目も向けずに部屋から猛スピードで飛び出していった。 「この…待てリヴァーズ!!」 待てといわれて待つ人間がいたら、是非お目に掛かりたい。当然リヴァーズも待つわけがなかった。というかベラミーの言っていることなど聞いていなかった。 走っている間、リヴァーズの頭の中からは、完璧に『花火』の2文字は消え去っていた。 ヤバイぜおれマジどうしよう。 そんなことを考えながら逃げていると、前方に、マニさん+その他の姿を発見した。 「マニさん!どうしようちょっとおれヤベェんだけど!!」 本当ならば助けてくれと泣きつきたいところであったが、マニさんにカッコ悪い所は見せたくないリヴァーズは、息を切らしながらとりあえずそう言った。 猛ダッシュしてくるリヴァーズに突然そんな事を言われ、マニさんはきょとんとしていたが、傍らにいたミュレさんはリヴァーズの後ろを追いかけてくるベラミーを見ると、サキほどより幾分か表情を和らかくして声をかけた。 「おはようベラミー。やっとお目覚めね」 「ミュレ!ソイツ捕まえろ!」 返事もせずに叫ぶベラミーに、ソレを聞いて何を言いやがる、という顔をするリヴァーズ。 「どういう状況かわからないけど…判りました船長」 言いながらミュレさんは、さっさと逃げようと横を走り抜けようとしたリヴァーズの足に自分の足をさっと引っかけた。 「どあっ!!!ミュレてめっ…」 科白を全部言い終える前にリヴァーズは盛大な音をたてて顔面からずっこけた。 マニさんがあらあらと言いながら、リヴァーズの横に座り込んで大丈夫?などと優しく声をかけている。羨ましいですな。 「リヴァっちカッコ悪ー」ドレッド(仮)がけらけらと笑っている。 「っせェ…」 リヴァーズは倒れた体勢のままドレッド(仮)をにらみつけた。ミュレさんにも何か毒づきたいところだったが、こわいのでそれはやめた。 「観念しろよ、リヴァーズ」 「ちょっと…待って、ベラミー」 怒りを露わに近づいてきたベラミーを、マニさんが手で制した。 「リヴァーズが何をしたかは知らないけど…充分反省してるみたいだし、もう許してあげてくれないかしら?」 どう見てもリヴァーズは反省などしているように見えなかったが、優しいマニさんにはそう見えたようである。 リヴァーズはこれ幸いとばかりに、そうそう!と言った。 「おれベラミーの部屋に花火探しに行ったんだよ、そしたらベラミーが寝てたから親切に起こしてやっただけなんだよ、マニさん〜」 「ウソつけ!!」 「花火?花火するのか?」 今まで事の成り行きを冷静に、というかあまり興味が無かったので傍観していただけだったエディだったが、「花火」というあまりにもリヴァーズに不似合いな言葉に思わず反応してしまった。 「あ?あ…ああ!そういやおれ花火するんだった!!」 ベラミーへの恐怖で完全に忘れていたが、そういえば自分は花火をするつもりだったという事を、リヴァーズはやっと思い出した。 ついでに、そう言えばまだ何かを忘れていたような気もしてきた。 「………あ」 「今度は何だ?」 「そういやおれサーキース達待たせてたんだった…すっかり忘れてたぜ…」 「ちょっと待って。サーキース”達”ってことはもしかして一緒にリリーちゃんもいるの?」 すかさず聞くミュレさん。 「あ?ああ、サーキースとリリーと」 「マニ、行きましょう!」 …リリーとロスとヒューイットが、というあとに続く言葉も聞かないうちにミュレさんは駆け出した。 「あ、ミュレ…ごめんね、リヴァーズ…」 マニさんはミュレさんのあとを追おうと立ちあがろうとしたが、ふと気がついた様子でリヴァーズに尋ねた。 「…ミュレ、場所も聞かずに行っちゃったけど…リリーちゃん達ってどこにいるの?」 「……リヴァーズ何してんのよ、おっそい…」 そろそろ限界、という口調でリリーが言った。 リリーはイライラしながらその辺りを歩き回っていたが、ロスとヒューイットは床に腰を下ろして、どこからそういう話になったのか染色体について語り合っていた。 「人間の染色体数は46だろ」 「ああ…。…それで面白い事にタマネギとカンガルーの染色体数が同じでな…」 「そうなのか…初耳だ、驚いたな」 「だろう…おれもそれを知った時、驚いたものだ」 「ちょっと!ヒューイット!ロス!変な話してないで、なんかしたら!?」 「なんかって言われてもな…他にする事無いし」 「変な話ではない…お前も一緒に語り合うか?」 「ジョーダン!ちょっとサーキース!あんたも寝てんじゃないわよ!」 いい加減待ちくたびれたリリーは、八つ当たりついでに手すりに背を預けて寝こけていたサーキースの頬を引っ張った。 「いってェ!なひすふんだよシシー!!」 頬を引っ張られたまま叫ぶものだからサーキースの言葉は最早言葉になっていなかった。因みにこの科白は、えりがなじの頬を引っ張って言って貰ったものを、えりが聞こえたままに書いたものである。よってどれだけ誰の名前だかわからない言葉が混じっていても、見逃して頂きたい。 「寝るなって言ってんの。っていうかあたしもう疲れた」 「んなほといっへもリファースまだかへってきへねぇはろ」 リリーはふてくされた顔でサーキースの頬をぶにぶに引っ張っている。そもそも自分がこんなに疲れているのはリヴァーズの所為なのだと思うと無性にムカムカしてきて、サーキースの頬を引っ張る手にも力がこもる。因みにこの科白は以下略。 「…も――――!!何やってんのよリヴァーズってば!」 「たしかにいい加減遅いな…花火は見つかったのか…?」 「…そもそも本当に花火なんかウチにあったか?」 「……さあ」 ロスの問いかけにリリーとヒューイットが口を揃えて答えた。 「あったんじゃねェの?たしか2、3ヶ月ぐらい前によった島で買ったとかなんとかあのバカが言ってた覚えがあるぜ…」 あくびまじりにサーキースが言った。 「ったく…みんなおれに無駄金使うなとか言うけどな、1番カネ無駄にしてんのはリヴァーズじゃねェのかよ?」 「いやそれはない」 「リヴァーズなんて全然マシよ」 「皆にしている借金を見てもお前が1番カネを使っているぞ、サーキース」 即答。しかも3人同時だ。 「オイオイお前ら…第一おれは無駄金なんざ使ってねェぜ?無駄なモンに金つぎ込むほどおれはバカじゃねェ」 「…ウソばっか…。っていうかもうそんなことどうでもいいからリヴァーズは?何であたし達がここまでご親切にあいつを待ってやらきゃなんないワケ?」 「まぁそれはそうだが…」 「…アイツまさかおれら待たせてる事忘れてんじゃねェだろな…」 「いや…いくらアイツでもそれはないだろう…多分な」 とある二人の船員が、そろそろメシ時だと言う事でキッチンへ向かおうとしていた。 ここで再びこの二人の船員についての説明が必要になるワケだが、はっきり言って二人のうちの一人が容姿をどう説明したらいいかわからない髪形の持ち主なので、簡単に説明させて頂く。 この二人はベラミー海賊団初登場の時に、後ろの方でメガネをくいっとやっていた通称メガネ君と、右端の方にいた通称右端である。 因みに通称通称言っているが、完全に我がサイト内のみでの通称である。(虚) 「お腹すきマシタネー」 「ああ〜はやくメシ食いてぇよな〜」 「ヒューイットクンのご飯オイシイデスヨネー」 メガネ君(仮)は、さあキッチンのドアを開けようか、というトコロで、数メートルサキで何やら騒いでいるベラミー達に気付いた。 「何やってるンデショネ?」 二人が顔を見合わせていると、エディがこちらに気付いた様だ。 「晩飯ならまだだぞ。…ヒューイットがいないからな」 「リヴァっちがバカなことやってるせいでね」 「バカ!?今バカっつったな!?誰がバカ!?おれか!?」 「お前しかいねェだろうが」 「リヴァーズクン何してルンデスカ?」 「花火やるんだってよこのバカ」 「ベラミーテメ、何ドサクサにまぎれてバカっつってんだコラ!?」 「とにかくだな…まとめて言えばこのバカが花火をやるって言うんでサーキース、リリー、ロス、ヒューイットが外で待たされてる。で、リリーをミュレとマニが探してる。で、おれ達はとりあえずそれを追おうとしてた所だ」 「エディお前もおれのことバカって言ってくれてんじゃねェよ!チクショーみんな揃っておれのことバカ呼ばわりしやがって…」 「だってバカだもん」 「黙ってろバカ」 「バカと言わずに何と言う?」 身もふたも無い総攻撃である。 「エート…まぁとりあえズ、ミュレサン達追った方がイインじゃなイデスカ?二人はドコ行ったンデスカ?」 「あ?ああ、多分デッキだろ…マニさんにリリーがどこいるか教えといたから」 「さっさと行くぞお前ら…バカはほっとけ」 ベラミーは片手をあげてデッキの方へと歩き出した。 「ベラミーテメー覚えてろ!!」 叫ぶリヴァーズであったが、エディに冷ややかな目で見られた。 「つい今しがたベラミーから逃げてきてマニに泣きついたのはどこの誰だったかな…」 「なッ…泣きついてねーよ!!」 「てゆーかリヴァっち、花火やりたいんならさっさと探せば?おれ達サキに行ってるよ?」 「だからだな、花火が見つかんねェからおれはこんなに苦労してンだよ。散々探したけど倉庫にもベラミーの部屋にもなかったしよ」 散々探したと言っているが、どちらの部屋もまるで探していない。 というか、探そうとすらしていない。 「花火ってリヴァーズクンが前どこかの島デ買ったやつでスヨネ?アレならボクどこにアルか知ってマスヨ」 「マジ!?どこ!?」 「…なんで買った本人が知らないで他のヤツが知ってるんだろうな」 エディの言葉は無視してリヴァーズはメガネ君(仮)に必死で花火の場所を聞く。 「アレならホラ、リヴァーズクンが置き場所がナイって言ってデッキに置いテル木箱の中に放りこんでタジャナイデスカ」 ・・・・・・・・・ 「チッキショーあんなトコだったかよ!!こいつァ盲点だったぜ!!」 「ていうかお前バカだろ」 サキに行ったベラミー達の後を行くエディが、去り際に一言残していった。その通りと言えばその通りである。 「…!!……!…ああそうだよおれァバカですよ!あ、お前ら待てよオイ待てって!」 リヴァーズを取り残し、他のみんなはさっさとデッキへ歩いて行っていた。 ドレッド(仮)が追越際にリヴァーズの背中をポンとたたき、なんとなく楽しんでいる口調で言った。 「リヴァっち、サーキース達に謝る言葉考えておいたほうがいいんじゃないの〜?」 「リリーちゃん!」 リリーの我慢が限界に達しようとしていた時、ミュレさんとマニさんがデッキに到着した。 「あれ?どうしたの、ミュレとマニ」 「マジだ…何しに来たんだよお前ら」 まだ眠気が覚めていないのか、眠たそうにサーキースがそう言うと、どこから取り出したのかミュレさんはメスをサーキースに投げつけた。 ドスッ…!!と鋭い音がしてメスはサーキースのすぐ横の手すりに突き刺さった。 「……!!………!!??」 いきなりのことに固まっているサーキースの目の横を、彼の前髪が数本落ちていく。完全に眠気が覚めた。 「……あっぶね…!!かすったぞミュレ!!」 「アラ残念…」 冷や汗を流しながら叫ぶサーキースに、ミュレさんはにっこり笑って答えた。 「残念じゃねェよてめえいきなり何しやがる!?」 「何じゃないわよアンタまたリリーちゃんを泣かして!もう2・3本あげましょうか!?」 「ハァ!?お前アイツのどこ見てそんなこと言ってんだよ!?涙のカケラも見えねェぞ!?」 「リリーちゃん、大丈夫?サーキースに酷い事言われなかった?」 「マニお前も人の話聞け!」 「えぇと…言われたような…もう忘れちゃった。…ソレよりあたしリヴァーズにマジむかついてるんだけど」 「リヴァーズ?リヴァーズがどうかした…ああ、あのコあなた達を待たせてたんだったわね」 マニさんは、サーキース達を見まわした。 「…マニ、リヴァーズと会ったのか?」 ロスが立ちあがりながら聞いた。ヒューイットも腰をあげる。 「ええ、多分もうすぐ来ると思うけど。…みんな」 「みんな…!?」 マニさんのその言葉にそこにいた4人は顔を見合わせた。 『みんな』ということはつまり・・・ 「あーサキっちはっけーん☆」 「ホラ、リヴァーズ、花火は結局どこにあったか言ってやれ」 「全くバカじゃねェのかお前…」 「うるっせェなホントにお前らはよ!!」 「アー皆サンいましタネー」 「おぉみんな揃ってんなぁ」 (ほぼリヴァーズだけが)ギャーギャーと騒ぎながら『みんな』がぞろぞろとデッキへやって来た。 とりあえずサーキース達待たされ組み4人が思う事は… 「リヴァーズ…」 「う゛…な、なんだよ…」 4人同時に名前を呼ばれ、今まで騒いでいたリヴァーズは目に見えて態度が小さくなった。 「なんだじゃねェよテメェヒト待たせすぎなんだよ!!」 「お前おれ達がどのくらい待ったと思ってる」 「あんた花火ごとき探すのにどれだけかけてんのよ!!?大体あたし花火したいワケじゃないのに!!」 「おれは夕食の準備もあるというのに…」 「アンタリリーちゃんをこんなに待たせて、覚悟はできてるんでしょうね!?」 待たされ組み4人のなかに何故だかミュレさんも混じり、リヴァーズに一気にまくしたてた。 これにはさすがのリヴァーズも謝るしかない。 「ゴメン!!すんません!!マジ悪かった!!この通り!!」 顔の前に両手をあわせ、平謝りである。ドレッド(仮)は笑いをこらえるのに必死だ。 「みんな…もうそのへんにしてあげて?」 「マニさん!やっぱマニさん優しい!ホラ、マニさんもこう言ってることだしよ?」 「…そう言うならお前さっさと花火を出せばどうだ」 「オォット!そりゃそうだエディちゃん冷静だな!」 「…お前がバカなだけじゃねェのか?」 「バカバカバカバカしつけェなベラミーお前…!」 「リヴァーズもうその辺でやめておけ…ベラミーも。花火あったんだろう?」 ケンカをおっぱじめようとした二人をヒューイットが止めに入る。彼もなかなかの苦労人だ。 「何、花火あったの?」 「どこにだよオイ?」 「ヘッ…聞いて驚け…実はなァ…何と花火はあの木箱ン中にあったんだよ」 何故か誇らしげな顔をしてリヴァーズは手すりの側にあった木箱を親指で示した。 「・・・・・・」 4人は無言でリヴァーズが指差した方に目をやり、それからまた無言でリヴァーズを見た。 「……リヴァーズ…お前ちょっとそこの手すりのうえに立ってくんねェか突き落としてやるから…」 サーキースが静かにそう言い、リヴァーズの肩をつかんだ。 「ミュレ、メスかして」 「リヴァーズ…今の答えは反則だぞ…」 詰め寄る他の3人にたいして、ただ一人ヒューイットだけはハァーっと溜め息をついただけだった。さすがに顔には疲労感が漂っていたが。 「あははははははっ、リヴァっち絶体絶めーいッ」 ドレッド(仮)はもう我慢などせず、腹を抱えて笑い出した。 ベラミーはやれやれ…といいながら、木箱を開けた。 「アア…あったあった…ホラリヴァーズ!」 「うわっオイベラミーまとめて投げんな!サーキース離せ!リリーもメス離せ!ミュレも何だよその手のメスは!?」 ベラミーがまとめて投げてよこした花火がリヴァーズの頭にボンボン当たった。 花火の束と打ち上げ花火の筒がごろごろと床に転がる。 「いってェ〜…」 「アハハハ、ダッサーイ」 「プッ、いいカッコ…」 「サーキース、リリー、やめておいてやれ…」 「ヒューイっちはいっつも優しいよね〜。あ、ていうかするんでしょ花火?うわ〜打ち上げ花火じゃん」 ドレッド(仮)は足元に転がった打ち上げ花火の筒を拾い上げ、楽しそうに笑った。 「おれっちこの花火がいいな」 「あ、あたしその横のヤツがいい!」 「リリーお前、花火やりたくねェっつってただろうがよ!」 「あんたがしつこいから仕方なくやってあげてんのよ!ホラあたしって優しいしー?」 「おいクソ砲手、そこにある花火よこせ」 「命令すんなクソ副船長!」 「ロスとヒューイットはどれがいい?」 「ああ…すまないな、ミュレ…右にあるのを頼む」 「じゃあおれはヒューイットと同じやつで」 そんなこんなで全員の手にそれぞれ花火が行き渡った。ちなみに、ここまで来るとそうするしかないが全員強制参加である。 全員好きな花火をそれぞれ手に持ち、ライターやマッチを皆で回しながら花火に火をつけていった。 火をつけた途端に、花火特有のあの音が一斉に響き渡った。 「キャーきれーい」 「うわお前コッチに向けんな!」 「音煩いな…」 輝く煙と華やかな光、火花の散る音と一緒に皆の声も飛び交った。 夜空で輝く星と同様、花火の炎も色鮮やかに騒々しく輝いている。 「イェーイみんな注目ー!おれっち今から打ち上げ花火ぶっ放しちゃいまーす☆」 シューシューと花火の音が元気な声をあげている中、ドレッド(仮)が打ち上げ花火を掲げて叫んだ。 「うっしメインの登場だ!」 「じゃ、真中におくから、みんな下がって下がってー」 ドレッド(仮)は打ち上げ花火をデッキの真中にセットし、ライターで導火線に火をつけた。 「点火!」 ボッと音を立てて火がつき、見る見るうちに導火線を辿っていく。 シューーーーッ… ひゅるるる〜…どーーーーーん© 「うわっ、スゲッ!何おれこんなの買ってたの!?」 「リヴァーズお前な…」 「サーキース見てみてキレーイ!」 「…そォかあ?」 「お前もうちょっと感動ってモンはないのか…」 「音がうるせェとか言ってたお前に言われたくねェよエディ」 「綺麗ね…ね、ベラミー?」 「…おれに振るなよ」 「いっやぁー…スゲェなぁ…」 「おれっちカンドー☆」 感想はそれぞれではあるが、とにかく一番派手な花火が咲いた事で、皆妙な満足感を覚えた。 「なァなァ、もう残ってる花火全部まとめて火ィつけちゃわねェ?」 「リヴァーズお前またそういうことを…」 「でも…いいんじゃない?面白そう…」 「よっし、じゃあつけるぜー!!」 「しくじるなよ、リヴァーズ」 「なァもう今日はここでそのままパーティーでいいんじゃねェか?」 「サキっち、いいこと言う!」 大はしゃぎの船員達を見て、ヒューイットは笑いながら溜め息をついた。 「…しょうがない。…何か簡単なものを作って持ってこよう…」 「そうか、悪いなヒューイット」 「構わんさ…お前も楽しめ、ベラミー」 「ハハッ、もう充分楽しいがな」 ベラミーは笑った。本当に楽しそうに。 「点火ァーッ!!」 「うわスゲッ!つか音バチバチうるせェな!」 そう言いながらサーキースも楽しそうに笑っている。皆笑っている。楽しくて楽しくて仕方ない、と言うように。 多分今夜は夜通しパーティーだろう。 キッチンに向かいながら、ヒューイットはそう思って、少し笑った。 今夜は騒がしい夜になるだろう。美しく騒がしい花火が、もうそろそろ消えようとしている。 たまにはこんな日もいいだろう、という、とある夜。 |